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エラリイ・クイーン『クイーン警視自身の事件』

クイーン警視自身の事件 (ハヤカワ・ミステリ 375)

クイーン警視自身の事件 (ハヤカワ・ミステリ 375)

ハヤカワなのでエラリイです。

エラリー・クイーンの中では異色な作品らしい。名探偵エラリイは一切登場せず、恐らく本格ミステリでさえない。退職後のクイーン警視が看護婦の女性とともに謎の事件を負うという筋書きで、サスペンス色が強い。

本格ミステリを期待すると肩すかしを食らうだろうが、なかなかどうしてよかったなあ。老人たちの冒険劇というテーマがとてもいい。御年六十三歳のクイーン元警視を筆頭に、主要人物は五十代六十代ばかりで、人生も後半戦にさしかかった彼らが事件のために生き生きしていく姿が切なくも微笑ましい。(※現代なら五十六十はまだまだ若いが、1956年の作品なので。参考:図録▽主要先進国の平均寿命の推移

クイーン警視と女性のロマンス要素もあり……というかこっちが主題なのかな。少年少女みたいにもじもじしている二人が見所。老人の冒険とロマンスという点で R・A・マカヴォイの『黒龍とお茶を』を思い出した。

黒龍とお茶を (ハヤカワ文庫FT)

黒龍とお茶を (ハヤカワ文庫FT)

正味な話エラリー・クイーンはどうも性に合わない。今までいくつか読んだけど唯一「面白い!」と感動したのがやはり異色作の『ガラスの村』だった。クイーンの論理的推理ってやつがいまいちピンと来ない。いずれ国名シリーズを揃えるつもりではいるけど、はてさて。