アントニイ・バークリー『最上階の殺人』(ネタバレ)
- 作者: アントニイバークリー,Anthony Berkeley,大沢晶
- 出版社/メーカー: 新樹社
- 発売日: 2001/08
- メディア: 単行本
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初めはちょっとタルかったが、個性強烈すぎる若き秘書・ステラと探偵シェリンガムが丁々発止のやりとりを見せるようになってからがぜん面白くなる。バークリーはラブコメを書く才能があったんだなあ。
一見単純な話がシェリンガムの推理でどんどん本格ミステリらしい複雑な様相を呈していく。名探偵シェリンガムここにあり、であった。
しかし、本編とは関係ないのだが、解説中で「ブラウン神父」のとあるエピソードのネタを割っているのはいかがなものか。『最上階の殺人』を手に取るくらいのミステリ好き(?)なら知ってて当然ってことかもしれないが、解説中で他作品それもよりにもよってミステリのネタバレをするのはやめてほしい。
追記……これ読むとやっぱり、探偵っていうのは他人の内面にずけずけ踏み込むイヤなヤツなんだなあと身に染みてわかる(シェリンガムの名誉のために言っておくと、シェリンガム自身はそこまでイヤなヤツではない。無礼だが愛すべき男である)。そこらへんでミルワード・ケネディ『救いの死』と繋がってるわけだな。
以下ネタバレ。
シェリンガムとステラは似合いのカップルに見えてしまうので、彼女にはプロポーズを受けてほしかった気がしないでもない。が、シェリンガムが伴侶にしたい相手かと言ったらそりゃ違うし、シェリンガムはシェリンガムで根っからの独身党のようなので、まあ落ち着くべきところに落ち着いたのだろう。
シェリンガムを「芸術家としての探偵」と看破した解説には膝を打った。シェリンガムは事件を分析する探偵ではなく事件を創造する探偵なのだ。