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ミルワード・ケネディ『救いの死』(ネタバレ)

救いの死 (世界探偵小説全集)

救いの死 (世界探偵小説全集)

まぐれ当たりで展開は予想通りだった。そのためちょっと肩透かしだったけど、全体としては面白い。村の名士を自認するインテリ(その実……)による手記の描き方がうまくて読ませる。

バークリー『第二の銃声』のピンカートン氏を意識したとおぼしき本書のエイマー氏は明らかに好感の持てる人物ではない。探偵という存在の嫌らしさを誇張した結果なのだろうか。いっそ主人公は善良なアマチュア探偵にした方が、結末の衝撃と後味の悪さは増したと思うが……たとえば、ミス・マープルみたいな好奇心と洞察力に富んだおばあちゃん探偵のお節介が悪い方に転がって犯人に殺されちゃうとか。うーん、それだとやっぱり違うな。

結末にカタルシスはないが、この作品の立ち位置を考えるとこれ以外にはないのかなとも思える。エイマー氏に代わって誰かが真犯人を告発したんじゃ結局同じ、ただのミステリになってしまうものね。

解説で指摘されているように、「推理」よりも「探偵」をテーマとした本格ミステリとして捉えるとしっくり来る。

余談:探偵役が犯人に殺されるという趣向について、自分は「えーっ予想外じゃないでしょ、バレバレでしょ」と思ったんだけど、バークリーのような多重解決型の展開を予想した人もいるようだ。なるほど。そっちが正しい(?)読みだったのかな。というか探偵が犯人に始末される話ってどこかで読んだ気がするんだよなあ、それで予想できちゃったんだと思うんだけど……。