fudebako

何かあったら書く

ジェイムズ・サーバー「虹をつかむ男」

映画化原作ということで手に取ってみた。

取ってみたのだが、本を開いてあらびっくり。なんと原作は 20 ページにも満たない短編だった。原作と映画が別物なのは明らかですね。これはこれで親切設計(?)。

そして原作の方は、小品ながらなかなか味わい深くてよかった。オチも何もない他愛ない話だけれど、空想の中で生活する主人公を活き活きと描いている。小さな額縁に入れて机の上に飾っておきたいような作品だった。

同じ空想愛好家の自分としては、主人公を笑う気にはなれない。だって誰もが素晴らしい容姿、陽気な性格、人並みの能力を授かるわけではないのだから。むしろ、現実では冴えない人間が自分の夢想の中では輝ける、その力によって現実でもなんとかかんとか生きている――パッとしない生活が変わるわけではないにしても。そういう、ちょっといい話として捉えたい。でも、少数派かな。

映画はどうやら「空想癖のある主人公が、ひょんなことから現実の冒険に出る羽目になる(で成長する)話」っぽい。最後は空想世界を「卒業」しちゃうんだろうね。

ラースと、その彼女」はシャイな独身男性がリアルドールを現実の彼女と思い込んでしまう映画だったけど、彼の妄想を否定せず寄り添うシナリオと、卒業の描き方が嫌みでなく秀逸な一本だった。

(このジャケットはひどい、本当は雪深い町を舞台にしたシリアスで静謐な作品です)

とまれ「LIFE!」は映画館まで観に行こうかな。エンタメとしては楽しめそうだ。